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やってきた冊子

 出会いとはなんと不思議で感動的なものだろう。その意味が分かるまで時間がかかることもあれば、即座に「出会えてよかった」と思えるものもある。

 ある冊子が私の手元に届いた。その内容は幸運に恵まれた人、五日市剛氏の公演筆録だった。この話は彼が26歳でイスラエルに行き、ある婦人の家に泊めてもらったことから始まる。その後、自らが起こした交通事故や次に相手のわき見運転から起こった正面衝突の事故など、自分が加害者・被害者にかかわらず相手を大切にしたことから今でも家族ぐるみの付き合いが続いているという。

 そして、ちょっとしたことから頼まれた不良少女の家庭教師から今の企業経営にいたる感動的な人生を語ったものである。その根底には感謝の心と「自分はツイている」という思いが満ちている。読み終わって随分温かな気持ちになれた。

 幸運とはなんだろう。冊子の中にもあるが松下幸之助氏は自分が幸運であることを信じていた。

「私は学校に行っていなかったからよかった。知らないことを簡単に人にたずねることができた」

「私は体が弱かったからよかった。人に仕事を任せることができ優秀な人材が育った」

ある夏、彼は船のふちに腰掛けていたとき、隣を歩いている人が脚を踏み外し海に転落したとき一緒に落ちてしまった。それでも「私は運がいい。冬ならば体が弱いので死んでいただろう」

このように明るく肯定的解釈が幸之助氏だけでなく五日市氏の人生も変えてしまったのだ。

勝者というのは特別な力やチャレンジ精神を持っているだけではなれないのは誰でも知っている。「運」も大切なのだ。そして、ポジティブな考え方が「運」を招くのだ。

どのように招くか。それは、人や出来事を介して招くのだ。嬉しい出来事だけを「運がいい」「ツイている」と思うのは軽率である。

ほとんどの人は自分が納得する人生を送るために必要な力やスキルは持っている。あと必要なのはその自分を信じることと必要なところに運んで行ってくれる波に乗ることである。それがその人の明るさである。そのためには周囲の人を信じられなければならない。周囲の人を大切にしなければならない。そして、自分自身が信頼に値する人にならなければならない。自分ひとりで成し得た成果の感動は少ない。大切な人たちと喜び合える成果ははるかに大きな感動と感謝を与えてくれる。

この冊子は大切な知り合いから私の手に届けられた。そして、その知り合いも大切な人から譲り受けた。このようにこの冊子は多くの人の手を経て日本中をめぐり、その一冊が私のところへ来た。私は冊子とともに信頼のバトンをもらったような気になった。この話をしてくれた五日市氏と顔を知らない多くの人に感謝を伝えたい。

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