アンカー再び
随分前にカウンセリングを終了し、元気に新たな人生へ旅立った人がいた。人生では数少ない喜びの別れである。そのときの決意を胸にした顔が忘れられなかった。その後、順調に暮らしていると思っていた。
その彼女から電話が入った。あれから離婚や親しい人との死別という大きな苦難を背負い、生きる方向を見失っているという。
「カウンセリングをお願いします」といった。
「苦労していたんだね」と答えた。
次の日、彼女からメールが来ていた。
「声を聞いたら生きる力がわいてきた。もう少し頑張ってみます」とあった。
NLPではその人が欲しいときに欲しい力を自分のうちから引き出すスイッチのようなものを「アンカー」という。カウンセリングではそのスキルで自分にぴったりのアンカーを見つける作業をする。ある人は中学のころにやっていた陸上でスタートする瞬間を思い出すことがアンカーだ。それで心地よい緊張感が体にあふれるという。また、ある人は、若いころによく聴いた音楽であのころの活き活きとした自分を思い出す。
彼女は私の声をアンカーにしてくれていた。
「ありがとう。私の声が役に立つなら、いつでも電話しておいで」と答えた。
人は人生を自分の足で歩かなければならない。誰も代わることはできない。そのとき声援を送ってくれる人がいるか、自分の力を引き出すアンカーをどれくらい持っているかで苦労の質が決まる。
神戸ではルミナリエが明日で終わる。あの光の回廊は震災で亡くなった多くの人への追悼の意を思い出させるアンカーである。美しいとともに哀しい。
彼女を含め一生懸命生きている隣人たちに、これからも共に力づけあえますようにという思いがよみがえった。


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