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ミラーボール

 今年は暖冬のせいで電車の窓から見える菜の花がまぶしい。

今日も車内の出来事である。

 私の前には白い杖を持った若い女性が座っていた。ある駅から隣に中年の男性が乗ってきて彼女の隣に座った。そして彼女のほうを見ると

「あんた、目が悪いんか?」と尋ねた。

こくりと女性はうなずいた。

はっと周囲の人の意識がそちらに集中した。あちこちでされていた雑談が止まったのだ。

「そりゃ、たいへんやろうなあ」

彼女は黙っている。

「でもあんた、目は見えんけど心は見えるやろ?」と聞いた。

「はい」

彼女は初めて声を出した。そして少し微笑んだ。

「わしもそれを大事にしとるんや」

ふと彼は前に座っている今時の若い男性に目を向けた。

彼は白い布で右手を吊っていた。

「にいちゃん、あんた、運動でもして骨を折ったんか?」

こくりと頷く。

「気いつけや」

駅に着いた。

おもむろに彼は「お父ちゃん、降りるで」といった。

向こうには足の不自由な男性が座っており、彼はその人の腕を支えるようにして降りていった。

 人はミラーボールである。彼は家ではうるさがられているかもしれない。しかし、人生のある瞬間でキラッと光るかかわりができたら、そこにいた人たちは明るくなれるのだ。全人格的にできた人などなかなかいるものではない。いやな人がいてもその人の光の部分を見る目があれば、随分優しくなれる。

NLPには「三つの知覚の位置」というスキルがある。自分の目、相手の目、第三者の目で、ある出来事の一場面を椅子を使ってみる方法である。

 自分の見方が凝り固まっていることすら気づかない自分を教えてくれる。

 菜の花とともにほのぼのとした気分を与えてくれた時間だった。

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